責任ある投資を選ぶ
金融機関のSRI投資信託売り込みに熱が入ってきた
ライブドア・ショック以降、投資家が企業に注ぐ目は厳しさを増した。死亡事故を引き起こした湯沸かし器、ずさんな衛生管理、上場資格を疑わせた不正会計−−。企業の投資意欲をそぐような不祥事が相次ぎ、株価や企業収益以外の投資の物差しを求める気分が広がる中、存在感を増しているのが社会的責任投資(SRI)。環境問題やガバナンス(企業統治)、法令順守、地域貢献などの社会的責任を果たすことに前向きな企業へ重点的に投資する運用手法だ。
SRIで投資判断の項目となるのは、企業の社会的責任(CSR、Corporate Social Responsibility)と呼ばれる取り組みだ。企業がステークホルダー(株主、従業員、取引先、顧客など)に負う責任を意味する。
具体的な項目はアカウンタビリティー(説明責任)、人権尊重、産休・育児制度、雇用政策など多岐にわたる。株主・投資家への積極的な情報公開、、顧客満足度の向上、安全対策の徹底、社員教育の推進なども含まれる。国連は機関投資家に「環境・社会・企業統治」の3要素を重視することを求めている。
基本原理の分かりやすさが、SRIが幅広い支持を受けている理由の1つだ。社会的な責任を果たし、消費者や労働者・企業社会の信頼をかち得ている企業はリスクの露払いが済んでいて、長期間にわたって安定的な成長が期待できるという考え方だ。企業のあるべきスタンス、払うべきコストに関して、しっかりとした経営判断ができる意志決定の仕組みを持っていることの裏付けでもあり、こうしたマネジメント体制は高い利益を生み出す企業体質にもつながりやすいという見方がバックボーンになっている。
SRI投信の選択肢が広がっている
投資する個人の立場から言えば、納得できる投資先選びにつながるという点が大きい。もちろん、投資行為からはしかるべきリターンを期待するわけだが、投資した後になって、投資先企業が不正を働いていたと判明したり、好ましからざる行為に手を染めていたと明るみに出るのは、投資した側としても気分が悪い。しかし、企業の内実を、個人投資家が不祥事発覚前からつぶさに知るのは難しい。その点、企業の健全性、透明性などに着目して細かく分析・調査して投資先に選定するSRIファンドは安心感が高く映る。
リタイア期の資金を投じる場合にも、SRIは有力な選択肢に入ってくる。投資活動を通じた一種の社会貢献をしたいと考える個人投資家にとっては、企業に望まれる行動を他社に先んじて選択している企業を、「投資」という形で間接的に応援することになるからだ。SRIファンドを購入することによって、投資家自身にとっても社会的責任の一端を担っているという自負を持って投資活動が続けやすくなるわけだ。
相次ぐ不祥事もSRIへの関心を呼ぶ背景に
運用成績がTOPIX(東証株価指数)の騰落率を上回るファンドも増えてきた。これまでは機関投資家向けにSRIファンドを販売する動きが進んでいたが、個人投資家の間での認知度が高まってきたのを受けて、最近は個人投資家向けのSRIファンドが増えてきた。
「SRIファンド」の2006年末時点での残高は住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、三井トラストグループの信託3社の販売分だけでも1300億円と、前年末比の約2倍に膨らんだという(日経金融新聞1月22日付)。ファンドの大半は国内の上場株式で運用している。
ライブドアの粉飾決算をきっかけに、利益率や財務といった経済的な観点からだけでなく、企業風土や倫理、公正さなどの企業体質面などから評価しようとする意識が個人投資家の間で高まった。女性の投資家の間では、育児支援や女性起用、職場環境などを重視する傾向も見える。「りそな・SGウーマンJファンド(愛称:Love Me! PREMIUM)」は女性の役職登用、能力開発、女性向け商品・サービス展開などを基準に企業を選んでいる。運用チームも女性主体だ。
ライブドア事件は個人投資家の企業を見る目を厳しくした
大和証券投資信託委託の「ダイワ・エコ・ファンド」や、三井住友アセットマネジメントの「エコ・バランス」は、環境問題への取り組みを重視したSRIファンドだ。このようにテーマや目的をはっきり打ち出したファンドも少なくない。ただ、同じテーマを掲げていても、組み入れ銘柄やパフォーマンスに差があるので、それぞれのポリシーや特徴を比較検討して選ぶことになる。
SRIファンドの中には、運用手数料(信託報酬))の一部を寄付に回す商品もある。児童虐待の防止に取り組む団体や、環境保護財団などに寄付するケースが多い。こういうファンドの場合、寄付先の団体が、投資家本人の主義・主張と反しないかどうか、あらかじめ確かめておきたい。
利益と社会貢献の一挙両得がねらえそうなSRIファンドだが、気を付けたい点もある。CSRに前向きな企業を選ぶと、日本を代表するような大企業がリストアップされがち。どこのSRIファンドも組み入れ銘柄が似通ってしまいやすくなる。主力銘柄以外に中小型株にも目を配っているかどうかは、リターンと深く関わってくるので銘柄比較をしてよく選びたい。
SRI投信の説明会に個人投資家の関心が高まってきた
手数料は一般的なファンドに比べて高めに設定されている商品が目立つ。企業のCSRへの取り組みを詳しく下調べする必要があり、銘柄選びにコストがかかるので、手数料に跳ね返るのはやむを得ない。それでもほかのSRIファンドよりも破格に高い手数料であれば、理由に納得できるかどうか、確かめておこう。同様の選択基準、運用手法でもっと安い手数料の商品がないか、調べてみるのもよさそうだ。
SRIファンドの比較には金融商品評価会社のモーニングスターが設けている「モーニングスター社会的責任投資株価指数」のページが役に立つ。各ファンドのパフォーマンスをはじめ、最新の商品の紹介や、最近起きた不祥事などを取り上げている。
([NIKKEI NET]より)
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